公開によせて、監督からメッセージが寄せられました。
モーションギャラリーのアップデートに公開されています。
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長くて短い5年でした。
たくさんの命やくらしが失われた3・11を経て、
私は偶然にも命を授かり、この子とどう生きるのか?
を考え続けた5年でした。
母になって私は愚かになりました。
お腹の子供への放射能の影響を思って
水を飲むのも息をするのも怖くなって
気が狂いそうでした。
国の発表はもとより、どんな権威のある人の意見も
アドバイスも何も信じることができませんでした。
そして、それは出産し、子供が4歳になった今も、
形をかえて続いています。
だけど、母になって強くなれた自分もいます。
それまでは、決してできなかった決断ができるようになりました。
子供のためと思えば、 それまで住んでいた場所や仕事を捨てることにも
なんの抵抗もありませんでした。
どんな困難がやってきても、子供と一緒に生き抜く。
それがいまの私です。
実は、今作は2年以上前に完成して、 海外映画祭で上映されましたが、
日本国内では、 たくさんの障害があり公開になかなかたどり着けませんでした。
そのこと自体が、 このテーマがいかに難しいのかを象徴しています。
5年という歳月は、人に忘却をもたらします。
苦しかったことを忘れられるから人は生きているともいえます。
でも、その一方で決して忘れてはならない気持ちがある。
あの日、灯りのきえた街角で抱いた不安な気持ち。
自分たちの生活がなんと危険なものの上に成り立っていたかへの後 悔。
知らなかった、知ろうとしなかった事実の存在。
大切な人をどのように守るかを考え続けた日々。
たった1時間でいいです。たった数分でもいいです。
あの日の気持ちを思い出す。
この5年があの日の自分たちの気持ちにそった歳月だったのか?
また、道を間違わないように見つめ直してほしいのです。
そして、ここからもう一度、 どんな社会が必要なのかを考えませんか?わたしと一緒に。
愚かだけど、強い心を持った母として
我が子に胸を張って、
こんな未来を作ったよ、と、
言える日がそう遠くないこと。
それが映画公開に寄せる私の願いです。
2016年早春
海南友子(ドキュメンタリー映画監督)
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